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社会人も革靴よりスニーカー|格式よりも快適性・実用性を重視する動きが加速する理由とは?

社会人も革靴よりスニーカー

毎朝、何を履いていくか迷ったことはありますか。

スーツに合わせるなら革靴、というのがかつての常識でした。しかし今、通勤電車の中を見渡すと、スーツにスニーカーという組み合わせも珍しい光景ではなくなっています。

この変化は、単なるファッションのトレンドではありません。働き方、健康への意識、そして「きちんとした格好とは何か」という価値観そのものが変わりつつある中で起きていることです。

このブログでは、社会人の足元がスニーカーへと移行している背景と、その流れを象徴するブランドや業界の動きについて掘り下げていきます。

記事のポイント
  • スニーカー支持の本質的な理由
  • 注目の日本のスニーカーブランド
  • 日本製の革靴が置かれた現状
  • ファッション全体のカジュアル化

社会人も革靴よりスニーカー|前編

・なぜスニーカーが支持される?シンプルな理由と価値観の変化
・革靴は手入れが面倒というのも理由?
・注目を集める日本のブランド「ASICS」
・コンバースのオールスターは社会人にもおすすめ?
・スニーカー市場で不振が続くNIKE
なぜスニーカーが支持される?シンプルな理由と価値観の変化

なぜスニーカーが支持される?シンプルな理由と価値観の変化僕が服飾専門学校に通っていた2018年ごろ、雑誌などでも「スニーカー通勤」というタイトルが見られるようになりました。それから約8年が経った2026年現在でも、革靴離れは以前より進んでいるようです。

「ビジネスでスニーカーOK」という意識が多数派になりつつあること、新社会人が入社式だけ革靴を履きそれ以降はスニーカーを選ぶこと、自治体までが軽装勤務を推奨するようになったことなど、いわゆる”脱革靴”の流れを伝えるニュースが目立つようになりました。

では、なぜスニーカーがここまで支持されるのか。その理由は極めてシンプルで、スニーカーの方が楽だからです。ただ、それは以前からわかりきっていることでもあります。今になってスニーカーという履き物自体が楽に変わったわけではありません。変化の本質は履き物そのものではなく、社会全体の価値観の側にあります。

なぜ今、価値観が変わったのか

まず大きいのは、「フォーマルな格好=有能・誠実」という等式が崩れたことです。かつてスーツに革靴という組み合わせは、礼儀や仕事への真摯さを示すシグナルとして機能していました。しかしIT企業やスタートアップが台頭し、Tシャツにスニーカーで何兆円もの会社を動かす経営者の姿が広く認知されるようになったことで、「きちんとした格好=仕事ができる人」という前提が社会全体で揺らいでいきました。

さらに、コロナ禍が決定的な後押しをしました。リモートワークが普及した期間、多くのビジネスパーソンが革靴を履かずに仕事をこなし、業務上の支障がほとんどないことを身をもって確認しました。「出社=革靴」という習慣が一度リセットされたことで、再出社後も以前のルールに戻る必然性がなくなったのです。

加えて、服装規定の緩和が組織的に追認されたことも見逃せません。2010年代後半以降、クールビズの延長線上で「服装自由」を打ち出す企業が増え、最近は自治体まで軽装勤務を推奨するようになりました。個人の感覚に、制度がようやく追いついた形です。

革靴の位置づけが変わった

こうした流れの中で、革靴そのものの役割も変わりつつあります。以前は日常の仕事着として機能していた革靴が、今は冠婚葬祭や重要な商談など、特別な場面のための履き物へと位置づけが移ってきています。入社式だけ革靴を履き、翌日からはスニーカーという新社会人の行動は、まさにその象徴です。

スニーカーが楽だという事実は昔から変わっていません。変わったのは、「楽をすることへの後ろめたさ」を社会が手放し始めたことだと言えるでしょう。

革靴は手入れが面倒というのも理由?

革靴は手入れが面倒というのも理由?足への負担という意味での「楽さ」はすでに見た通りですが、もう一つ、手入れの面でも革靴とスニーカーの差は大きいです。

革靴のケアは工程が多く、ブラッシングで埃を落とし、クリームを塗り込んで革に栄養を与え、さらに磨いて光沢を出す必要があります。雨に濡れた日はその日のうちにシューキーパーを入れて乾かし、防水スプレーも定期的にかける。そこまでやって初めて「手入れができている革靴」になります。さらに、手入れ不足は見た目にはっきり出てしまうため、ビジネスの場では清潔感や仕事への姿勢まで問われかねないというプレッシャーもあります。

一方、スニーカーはこうした工程がほぼ不要です。そもそも手入れをしないことも珍しくなく、するとしてもクリーナーを塗布して柔らかい布で拭く程度で十分です。多少汚れていても「味」や「こなれ感」として許容される文化があるのも、スニーカーならではです。

手入れの手間はあくまで補助的な理由として位置づけるのが正確だと思いますが、忙しい現代の社会人のライフスタイルには、その点でも合っていると思います。

注目を集める日本のブランド「ASICS」

スニーカーへの移行が進む中で、ビジネス使いのスニーカーとして特に注目を集めているのが、日本生まれのブランド「ASICS」です。

日本生まれのブランドだけあって、幅広な日本人の足の形を熟知した設計になっています。欧米発のブランドと比べてフィット感が高く、長時間履いても疲れにくい。これはビジネスシーンで一日中歩き回る場面で特に実感しやすいポイントです。

注目を集める日本のブランド「ASICS」

ASICSより

デザインの面でも、ビジネスの場で使いやすい特徴があります。「GEL-KAYANO」シリーズなど、ソールに厚みのあるランニングシューズでありながら、ナイキやアディダスと比べてデザインが主張しすぎない傾向があります。そのぶん、きれいめのパンツやジャケットスタイルにも馴染みやすく、オフィスカジュアルの足元として浮きすぎない存在感があります。

近年はランニングシューズをあえてスーツやジャケパンに合わせるスタイルも広く見られるようになっており、そうしたコーディネートの選択肢としても機能します。よりスーツに合わせやすいドレスタイプをお探しなら、「アシックスウォーキング」というラインも選択肢に入ります。

かつて「地味なスポーツブランド」と言われたイメージも、すでに過去のものになっています。近年は海外のセレクトショップやハイブランドとのコラボも増え、欧米やアジアで「クールな日本ブランド」として再評価された流れが国内にも波及しています。機能性は本格的でありながら、ビジネスの場で目立ちすぎない。そのバランスの良さが、ASICSがビジネス使いのスニーカーとして支持される理由だと思います。

コンバースのオールスターは社会人にもおすすめ?
コンバースのオールスターは社会人にもおすすめ?

コンバースより

ビジネス向けに特化したスニーカーだけが選択肢というわけではありません。ここでは、誰もが知る超定番の「コンバース キャンバス オールスター(チャックテイラー)」を取り上げます。

シンプルで完成されたデザインと手の届きやすい価格帯が特徴で、2025年10月のリニューアルではラストやソール構造を一新し、履き心地も向上しています。社会人にもおすすめできるのか、私服勤務とスーツ勤務に分けて考えてみます。

私服勤務の場合

まず問題ないでしょう。シルエットがシンプルで主張が強すぎないため、ジャケパンスタイルからカジュアルな私服まで幅広く合わせやすいです。ホワイトやブラックのキャンバスであれば清潔感も出やすく、社会人の日常使いとして自然な選択肢です。価格帯も手が出しやすく、汚れても気を遣いすぎなくて済む点も実用的です。2025年のリニューアルで長年の弱点だったクッション性の低さがある程度解消されたのも、通勤・仕事での使用に向いた一足になったと言えます。

スーツ勤務の場合

こちらは上級者向けの選択肢だと思います。キャンバス地のアッパーはカジュアル感が非常に強く、革素材のビジネススニーカーのようにスーツに歩み寄る方向性とは逆にあります。「あえてやっている」という意図が伝わらないと、ちぐはぐに見えるリスクがあります。

ただし、黒のオールスターに細身のスーツという組み合わせは、ファッション誌でも繰り返し取り上げられてきたスタイルです。スーツがモード寄りのシルエットであれば、むしろ面白いコントラストになることもあります。それができるかどうかは、本人のスタイル全体のまとまりや着こなしへの意識次第という部分が大きいです。

万人向けかと言われれば否ですが、私服勤務なら素直におすすめできる一足で、スーツ勤務では意図的に選ぶ必要がある靴だと思います。

スニーカー市場で不振が続くNIKE
スニーカー市場で不振が続くNIKE

エア ジョーダン 1 MID SE|ナイキより

あらゆる靴がスニーカー化していると言われる中でも、すべてのブランドが好調なわけではありません。その象徴的な例が「NIKE」です。

世界一のスポーツブランドとして知られるNIKEですが、ここ最近の経営状況はあまり良い話を聞きません。ファッション専門メディアFASHIONSNAPによると、2025年度第3四半期(2024年12月〜2025年2月)の売上高は前年同期比9%減、純利益は32%減で、全地域で前年を下回っています。CEOも2024年に交代しており、経営の立て直しを迫られている状況です。

定番モデルへの依存

業界内で指摘されてきた問題の核心は、エアマックスやジョーダンなど初期モデルの復刻版への依存です。復刻に頼りすぎた結果、新鮮味のある製品が出てこなくなり、転売市場でプレ値がつくようなコレクター以外の一般的なユーザーの支持を徐々に失っていった流れがあります。

「快適性・実用性」へのシフト

一方、今の消費者がより注目するのは快適性や実用性、つまり靴という道具としてどれだけよく使えるかという点です。その点でNIKEは必ずしも世界一とは言えず、オン(On)など急成長を遂げているブランドもあれば、ASICSのように地味と言われ続けてきたブランドがその良さを改めて評価されるようになってきた例もあります。日本では、ASICS以外にも、ムーンスターやアサヒシューズ、アキレスなど、日本人の足に合った履き心地において高い評価を得ているブランドが他にもあります。

NIKEのような派手さには欠けるかもしれませんが、靴は本来コレクションアイテムではなく、履いて歩くための道具です。誠実にものづくりをしてきたブランドに注目が集まるのは、自然な流れですし、とても良いことだと思います。

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社会人も革靴よりスニーカー|後編

・絶滅危惧種?日本製の革靴
・マドラスとの比較|日本の革靴ブランド
・実用性重視の流れは他にも|ビジネスのカジュアル化
・おしゃれは我慢から快適な日常への変化|ファッションの動向
・リカバリーウエアも注目を集める
まとめ|社会人も革靴よりスニーカー
絶滅危惧種?日本製の革靴

絶滅危惧種?日本製の革靴スニーカーへの移行が進むということは、裏を返せば革靴を履く人が減るということでもあります。

日本には、ASICSなどスポーツシューズ製造に長けたメーカーがある一方、東京の浅草など古くから日本の靴作りを手がけてきた町があります。そうした町が今もなお製造しているものの大半は革靴で、それらは今、危機的状況を迎えていると言われています。こうした状況は町工場だけでなく、大手も例外ではありません。

リーガルに何が起きたか

日本製の革靴メーカーの代表格である「REGAL(リーガル)」を例に見てみます。ファッション専門メディアWWDによると、2026年2月、リーガルコーポレーションは希望退職者を50人程度募り、1924年創業の製造子会社・チヨダシューズ(新潟県加茂市)の操業を停止すると発表しました。グッドイヤーウエルト製法による高い職人技で知られた工場で、全従業員63人が退職することになります。退職者はリーガル本体と合わせて合計113人程度に上る見込みです。

売上高を見ると、コロナ前の2020年3月期が291億円だったのに対し、2026年3月期の予想は229億円で、コロナ前の8割にも届いていません。日刊SPAによると、直販(自社店舗・EC)の売上はコロナ前とほぼ同水準まで回復しているといいます。興味深いのはこの点で、リーガルを愛するコアなファン層は戻ってきている。しかし、百貨店やシューズ専門店への卸売りが壊滅的で、コロナ前比で4割近く消えたままになっています。一般の消費者が百貨店で革靴を手に取るという行動自体が戻っていないわけです。

「絶滅危惧種」は冗談ではない

コアなファンは残る、しかし市場全体は縮んでいく。これがリーガルの数字が示す現状です。その一方で、新たにスニーカー市場へ参入することも簡単ではありません。製造の強みを持っていたとしても、スニーカーはすでに強大なブランドが確立された市場で、後発で入っていくのは容易ではないからです。

ネット上で言われている「日本製の革靴は絶滅危惧種」という表現も、冗談と笑い飛ばせない話です。古くから続く日本製の革靴の灯を、どう守っていくかが問われています。

マドラスとの比較|日本の革靴ブランド
マドラスとの比較|日本の革靴ブランド

マドラスより

リーガルと並んで比較されることの多い日本のシューズブランドが、「madras(マドラス)」です。創業100年以上の革靴メーカーとして知られる一方、スニーカーを含めた機能的なシューズ作りにも力を入れているブランドです。

リーガルが製造子会社を清算し、革靴専業の限界を露呈した形になったのに対し、マドラスは以前から革靴・カジュアルシューズ・スニーカー・サンダルまで幅広く展開しながら、機能面への投資も続けています。ゴアテックス搭載の防水シューズ、防滑・抗菌・消臭といった機能カテゴリーを設けており、「老舗の革靴メーカー」という枠に留まっていない印象です。

中でも注目されるのがリカバリーメタインソールです。公式サイト上でも非常に前面に打ち出されており、「世界初の指圧効果」という表現も使われています。単なるクッション性の向上ではなく、履いて歩くことで足や体のコンディションを整えるという方向性で、スニーカーへの移行理由が「楽さ・機能性」である以上、その土俵でしっかり戦える武器を持っているのは大きいと思います。

革靴の技術やものづくりの蓄積を持ちながら、機能シューズにもその知見を活かせる立ち位置は、今の時代にむしろ合っています。縮小する革靴市場への依存度が低い分、生き残りやすい構造にあると思います。

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創業100年を超える老舗高級シューズ【madras(マドラス)】

ところで、念のためリーガルの公式サイトを確認してみると、それなりの数のスニーカーを展開していました。調べてみると、2025年に23年ぶりのリブランディングを行っており、新たなコンセプトは「Always feel good」で、スニーカーコレクションを含む幅広い展開へと舵を切っていました(リーガルのプレスリリースより)。

これを踏まえると、両社の違いは「どちらが早く動いたか」という点に移ります。マドラスは以前から幅広い展開をしていたという点でより先行していた、というのが正確な整理です。

老舗の革靴ブランドが相次いでスニーカーラインを強化しているという事実は、この流れがいかに避けられないかをよく示しています。消費者が求めるから企業が動く、企業が動くからさらに選択肢が広がる。この循環は一時的なブームではなく、業界全体の構造的な変化だということが、こうした動きからも裏付けられています。

実用性重視の流れは他にも|ビジネスのカジュアル化

実用性重視の流れは他にも|ビジネスのカジュアル化実用性を重視するアイテムへの移行は、靴だけの話ではありません。装いそのものがカジュアル化しているという、より大きな流れの中にあります。

かつてのビジネスパーソンの装いには、暗黙のルールがありました。スーツに革靴、手持ちのブリーフバッグ、ネクタイは必須、といった「こうあるべき」という型です。それは単なる好みではなく、社会人としての礼儀や信頼感を示すシグナルとして機能していました。しかし今は、そのシグナルの発し方が変わっています。合理的な判断ができる人、無駄にこだわらない人、という見られ方のほうが好意的に受け取られる場面が増えているからです。

その象徴的な例が、スーツにリュックというスタイルです。かつてリュックは完全にカジュアルの領域でしたが、PC・タブレット・充電器など持ち歩くものが増えた現代では、手持ちのブリーフケースに全部収めて通勤するのは現実的でなくなってきました。体への負担という点でも、片側に重さがかかるショルダーバッグよりリュックの方が理にかなっています。「ダサい」という声があっても広まり続けているのは、実用性が見た目のルールに勝っているからで、スニーカーへの移行と同じ構造と言えます。

装いの「型」よりも、自分の体や行動にとって何が合理的かを優先する流れ。それを後押ししたのが、働き方の多様化やコロナによるリセットであり、今後もこの方向は続いていくと思います。

おしゃれは我慢から快適な日常への変化|ファッションの動向

おしゃれは我慢から快適な日常への変化|ファッションの動向「おしゃれは我慢」という言葉があります。歩きづらくても革靴を履く、足が痛くてもヒールを選ぶ。不便や痛みを受け入れることが、美意識や品格の証明だという考え方が、ファッションの世界には長く根付いていました。

しかし今、その前提が崩れつつあります。外反母趾や膝への負担といった身体的なリスクが広く知られるようになり、健康意識の高まりとともに、我慢を美徳とする考え方は説得力を失いつつあります。非日常を演出するファッションよりも、日常をより快適にするためのファッションへ。おしゃれの定義そのものが、「どれだけ我慢できるか」から「どれだけ自分の生活にフィットしているか」へと変わりつつあるのです。

この変化はビジネスシーンに限らず、ファッション全体で起きています。その象徴的な存在がユニクロやワークマンです。シンプルで機能的、手の届きやすい価格帯で快適さも両立する。我慢を前提としない選択肢が多くの人の日常にフィットしたのは、時代の要請に応えたからだと言えます。アウトドアブランドやスポーツブランドの街着としての普及も、同じ文脈で捉えることができます。

革靴からスニーカーへの移行も、こうしたファッション全体の変化の一部です。快適さを選ぶことが、自分の生活を合理的に整える姿勢として受け入れられるようになった時代において、スニーカーという選択肢はごく自然な帰結と言えます。

リカバリーウエアも注目を集める

リカバリーウエアも注目を集める機能性や健康への関心が高まる中で、「リカバリーウエア」というジャンルが注目を集めています。着るだけで血行促進・疲労回復などの効果が期待できるというものです。

ただ、効果を実感できる人とそうでない人が分かれるという声も多く、不適切な表示の問題など、さまざまな議論があるのも事実です。

個人的にも、あまり魅力を感じません。睡眠時の着用が効果的とされていますが、良質な睡眠には体を締め付けないことや体温調節のしやすさが重要とされており、何かを身につけることで回復するという発想とは方向性が合わない気がします。仮に効果があったとしても、それは対症療法に過ぎないとも思います。疲労が溜まりやすい社会構造、つまり働きすぎという根本的な問題には、ウエアでは対処できないからです。

とはいえ、こうしたアイテムが注目される事実は、機能性・健康を重視する価値観が社会に根付いていることの表れです。スニーカーへの移行も同じ文脈にあります。コロナによる習慣のリセット、企業や自治体による制度的な後押し、そして健康・機能性重視という価値観の変化。複数の要因が同じ方向を向いている以上、これはブームではなく構造的な変化と見るのが自然でしょう。

最後に個人的な話をすると、以前スポーツアパレルの会社でデザイナーとして働いていたとき、自分も周りも常に私服でした。その経験からすれば、スーツを着ているだけでも十分フォーマルに映ります。そこにスニーカーを合わせて快適にするという選択は、バランスとしてちょうど良いのではないかと思います。

型にはまった「正解」ではなく、場に対して自分なりに最適化するという発想です。靴という入口から見えてくる働き方・価値観・ファッションの変化は、すべて同じ方向を向いているように感じます。

まとめ|社会人も革靴よりスニーカー

このブログ全体のポイントを最後にまとめます。

– 社会人の間でスニーカーが支持される理由は、楽さそのものより「楽をすることへの後ろめたさ」を社会が手放し始めたことにある
– 手入れの手間という点でもスニーカーの方が楽で、忙しい現代の社会人のライフスタイルに合っている
– ASICSは日本人の足に最適化された設計と主張しすぎないデザインで、ビジネス使いのスニーカーブランドとしても支持を集めている
– コンバースのオールスターは私服勤務なら素直におすすめできるが、スーツ勤務では意図的に選ぶ必要がある
– NIKEは定番モデルへの依存から一般ユーザーの支持を失いつつあり、快適性・実用性で勝負するブランドに注目が集まっている
– 革靴を履く人が減る中、リーガルの事例が示すように日本製の革靴市場は縮小が続いており、「絶滅危惧種」という表現も冗談とは言えない状況にある
– マドラスはリーガルより早く幅広い展開へ移行しており、老舗ブランドのスニーカー化は業界全体の構造的な変化を示している
– 実用性重視のアイテムへの移行は靴だけの話ではなく、スーツにリュックなどビジネス全体のカジュアル化という大きな流れの一部である
– 「おしゃれは我慢」という前提が崩れ、快適さと機能性を重視する価値観がファッション全体に広がっている
– リカバリーウエアへの注目も同じ文脈にあり、この流れは複数の要因が重なった構造的な変化であることから、近いうちにフォーマル一辺倒に戻るとは考えにくい

最後に付け加えると、スニーカーへの移行が進む一方で、フォーマルな装いにこだわり、足元も磨き上げた革靴を選ぶという考え方も素敵だと思います。快適性・実用性を重視する流れが広がりながらも、多様な価値観が認められる社会になっていければと思います。

このブログは2026年4月時点までの情報をもとに作成しています。

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